スズキ単気筒のシリンダー。3万キロ強の走行という事である。
この表面状態は何だろう、クロスハッチは全く消え去ってしまいツルツルではないか。
寸法を測ると確かに摩耗は少ない?(リングの当たっていないところと、リングが当たりクロスハッチの消えている所の寸法差が少ない)。元々クロスハッチが浅く(深く入らない?)少しの摩耗で消えてしまうという事か?
元々オイル含浸の少ないメッキ素材に、クロスハッチが消えてしまったら・・・・ガクブルである。
巷間喧伝されるメッキシリンダーの利点は
・伝熱が良い
・耐久性に優れる
ということである。
オイル管理や走行状態等多数の要素に左右されるとは思うが、はたしてこのシリンダーを見る限り耐久性については大いに疑問を持たざるを得ない。
メッキシリンダー採用によって初めて可能になった設計というものももちろんあるだろうし、もとよりメッキシリンダーを全否定するつもりは毛頭ない。が、「メッキシリンダーだから高性能」「時代はメッキシリンダー」「メッキシリンダーマンセー」といった短絡的な思考には首を傾げざるを得ない。
焼付き等の重大な損傷が起きた場合、鋳鉄製シリンダーでは再生の可能性が残っているが、メッキシリンダーでは深い傷やメッキが剥がれてしまえば再生はほぼ望み薄である。
メッキ再生を謳う業者も無いわけではないが、まだまだコスト的にも一般的ではないのが実情。
トラディショナルな鋳鉄製シリンダーとメッキシリンダーを秤に掛けた際、果たして「補修用OVSピストンを使用したボーリング加工によるシリンダー再生が容易である」という利点を、メッキシリンダーが凌駕するとは到底思えないのだが。
(さらに言うと「さんざ乗って枯れた鋳鉄シリンダーをボーリングするとry」これはもうひとつ上のレベルの話)
つまりはメーカー側の本音としては「車両のライフサイクル中持ってくれれば良し。壊れたら新品部品買ってね。つかそれよりも新車に乗り換えてね」という事なのだろう。
「気に入った車両はとことん乗って楽しみましょう、壊れたら大事に修理し、慈しみましょう」という文化的創造的思想と相容れない、象徴的な物事の一つだと思う。
文化の思想のはさておき、目前の仕事はこなさなければならぬ。
縦キズも酷いが幸いメッキ剥がれ等は無い様子なので、とりあえずホーニングによりクロスハッチを再生し様子を見ることになった。
写真はホーニング後。フラッシュによりクロスハッチは見ずらいがそれなりに仕上がった。
明日は休み。21時07分本日の業務終了。以上。
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