ヤマハJET760cc用クランク。
PWCも4スト化が大分進んできましたが、まだまだ2ストのこの手も根強い人気があるようです。
これからも長く大事に乗りたいのでキッチリO/Hとのこと。お任せください!
全てに共通する事ですが、特にこの手のクランクについては、「壊れる前に持ってきてください」という事です。
異音がする、あるいは一部の部品が完全に破損してからだと、修理しようと思っても必要部品がかさんだりあるいは修理不能となる場合が多い。
大破に至る前の適切な時期にオーバーホールを行い、消耗部品を交換し、適当に歪んだ部品を修正を行う事でその後の歪みが少なく、さらに高精度の組立、メーカーでは行っていないバランス修正を行えば、正直「新品を買う以上の価値があります」。
クランク中央部の組立。
180度の位相をキッチリ合わせるため(つまり片方が上死点の時もう片方が下死点になるように)ダイセット冶具を使用して組立てます。
巷間ケガキ線で合わせる修理業者も在るようですが、ここは絶対に疎かにできない所。当社では位相合わせが必要などのような機種でも必ずダイセット冶具を製作使用して(無ければ製作して)組立を行います。
コンロッド大端部。写真の様な細いニードルローラーで支持されており、回っているというよりむしろ「滑っている」、クランク内で一番摩耗しやすい箇所です。
この機種はクランク板とクランクピンが一体です。つまりこの部分が焼付き等破損した場合クランク板ごと交換(あるいは部品設定が無い場合も多くその場合クランクAssy交換)で費用がかさみます。早め早めのオーバーホールをお勧めする理由の一つです。
ニードルベアリング始め全てのベアリングはは新品交換、コンロッド内径はクリアランスに留意しつつホーニングを行い歪みを修正します。
組立後のクランク芯出し。
単純に「振れを少なくする」だけではなく、振れの方向、左右でのそろい方にも留意します。
さらに大事なのは「組立時の応力を抜いてやる事」。応力が残っていると、一見芯が出ているように見えても、ちょっとした衝撃等でまた行きたい方にずれてしまい、エンジン始動後に簡単に狂ってしまいます。
一見単純そうな芯出しも、実は深いノウハウがあるのです。
クランクシャフトバランス修正。
写真のようにクランク板の重い部分に穴をあけて調整していきます。今回入庫の品で3か所計10g弱の修正量です。
この手の組立式クランク、いわゆるクランクバランシングマシンでは計測が困難で、メーカーではバランス取りしていません。
10gのアンバランスはかなりの量で、相当鈍い人でも乗れば目からウロコと云う位良くなると思いますが、この品が特別狂いが多い訳ではなく見ればどれも大体こんなものです。
アンバランスは振動、ひいては耐久性に影響します。ジェット3気筒クランクで、稼働時間少なくコンロッド大端、シリンダーピストン共無傷で、メインベアリングのみ大破という事例が続いた事がありますが、総じてバランスの狂いが大きくこれが原因と考えています。
クランクについてはこだわりも強いので、書き出したらついつい大盛りのブログになってしまいました。
正直当社のクランクO/Hは、単純な「組み換え芯出し」とは似て非なるものですので、こだわる方は是非体感していただきたいと思います。
23時20分本日の業務終了。以上。
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工房名岐 (木曜日, 04 7月 2013 17:40)
ホンダスポーツの組み立て式クランクのオーバーホールは出来ますか?
中野 靖彦 (月曜日, 08 2月 2016 15:41)
大変お世話になります。
㈱石川エナジーリサーチの中野 靖彦と申します。
新規単気筒エンジン用の圧入クランクシャフトの圧入芯だしはお願いできるのでしょうか?
よろしくお願いします。
yasuhiko_nakano@ier.co.jp